常に市場全体を見据えることが重要

東芝テックとリコーが複合機(MFP)の生産合弁会社を設立するという発表がありました。引用記事によると、「2024年4～6月をめどに、吸収分割方式で両社の複合機などの開発生産に関わる事業を分割した上で、リコー子会社のリコーテクノロジーズに承継させる。事業統合後は、リコーテクノロジーズを新たな合弁会社として出資比率をリコー85％、東芝テック15％とする。開発生産は統合するが、複合機の販売やサービスの提供は両社がそれぞれ独自に展開し、協業は検討していない」とのことです。MFPやプリンターの世界では日本企業が一人勝ちで、日本企業間でしのぎを削ってきて、2000年代初めにピークを迎えます。しかし、その後タブレット端末の普及により、ペーパーレス化が急激に進み、オフィスでの印刷量が対前年比20%減等外的要因による業績低迷に喘いでいます。そしてコロナ禍です。さらに引用記事は、日本企業の高シェアを獲得した要因として、「日本の複合機メーカーがこれまで強さを発揮できたのは、単なるコピー機の時代からオフィスの利便性を向上するためにさまざまな機能を付加し、デジタル化も果たしていくのに必要な『多様な技術のすり合わせ』を実現してきたからです。光学、画像処理などのエレクトロニクス、紙搬送などのメカ、トナー、感光体などの化成品、ネットワーク技術などが相まって生み出されるハードウェアであり、個人的には“究極の組み込み機器”の一つと考えています。」としています。この背景には、主要部品やトナー等消耗品を外注ではなく自前で準備してきた、という側面もあります。部品やトナーを外注したのでは、合わせ込み技術も発揮することは困難です。MFP市場が縮小してゆけば、小さなパイの取り合いという消耗戦に陥り、業界共倒れという状態に陥るという危険性もありました。その様な状態になる前に対策を打とうとするこの取り組みは、高シェアを確立してもそれに甘んじることなく、常に市場全体を見据えて対策を講じてゆく、という好例です。

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